【感想】『ブラヴォー・ツー・ゼロ 孤独の脱出行』救いの無いたった絶望の脱出行

最近、クリス・ライアンという著者の小説を結構読んでいました。

なかなかスリリングな軍事小説を書くので、結構お気に入りの著者です。

ちなみに、今までに読んだのは以下の本ですね。

  • 孤高のSAS戦士
  • 戦場の支配者 上・下
  • 裏切りの戦場 上・下
  • 神火の戦場 上・下
  • 血泥の戦場 上・下

 

そして、この著者は元イギリス特殊部隊員という異色の経歴を持っているんですが、自身の参加した戦闘についてノンフィクションも書いているとのこと。

タイトルは『ブラヴォー・ツー・ゼロ 孤独の脱出行』。

湾岸戦争時、イラク軍のスカッドミサイル破壊任務について書かれた本です。

 

ということで、ちょっと面白そうだと思ったので読んでみました。

実際にあったとはにわかに信じがたい、恐るべきストーリーが語られていてなかなか衝撃的な1冊でした。

クリス ライアン (著), Chris Ryan (原著), 関根 一彦 (翻訳)

派手な銃撃戦もほとんどない、一見地味なストーリー

読んでてまず思ったのが、派手な銃撃戦がほとんど発生せず、全体的にちょっと地味めのストーリーだな、ということです。

タイトルの通り、基本的に著者がイラクを脱出する様子が描かれているだけで、目を見張るような戦闘シーンは基本的にありません。

 

軍事系のノンフィクションであれば、『アフガン、たった1人の生還』、『レッド・プラトーン』、『ブラックホーク・ダウン』、『ホースソルジャー』などを読んだことがあるんですが、どれもかなり派手な戦闘シーンがありました。

特にこの中でも『アフガン、たった1人の生還』は本書と同じく逃避行を描いた作品なのですが、本書と違ってがっつり戦闘シーンがありました。

なので、これらの作品と同じように本書も熾烈な戦闘繰り広げられるのかな、と思っていました。

 

しかし、そういったシーンを期待して読むと、ちょっと肩をすかされたような感じになります。

本書では、冬のイラクをシリアに向かって脱出する様子が延々と描かれています。

そのため、上で挙げたノンフィクションたちと比較すると、地味な印象がありますね。

 

でも、だからといって面白くないかといえばそうではなく、派手なアクションとは別の面白さがありました。

敵国イラクを脱出すべく、ひたすら孤独な逃避行を続ける様子は、一度読み始めたら最後まで読み切りたくなる緊張感です。

銃を撃つだけが戦争じゃない、ということを知りました。

敵国領内300kmを単独で移動し脱出

この逃避行は、奇しくも『アフガン、たった1人の生還』と同じく、ヤギ飼いに発見されたことから始まります。

敵に包囲された著者たちは、荷物も放り出して必死の逃走を図ります。

そして救援を要請するのですが、無線がつながらない。

 

そんなことをきっかけに、著者たちのチームは真冬のイラク領内を逃走することになります。

しかも、途中で次々と仲間たちとはぐれていきます。

気づいたらどこかへ消えていなくなっている仲間、現地民に助けを求めて立ち去っていく仲間、そして最後には著者だけになります。

 

ここはなかなか恐怖と混乱を感じさせるシーンですね。

気づいたら一緒にいたはずの仲間がいないというのは、自分のこと以外に注意がいかなくなっていた、ということかと思います。

十分に訓練された特殊部隊の人たちですらそんな状態になるなんて、相当な事態です。

過酷な環境、追っ手のイラク軍といったものにいかに追い詰められていたか、考えるだけで恐ろしい。

 

そして仲間たちがいなくなり、著者の孤独な脱出行は本番を迎えます。

食べ物も飲み物もほとんどない中、著者は1人でシリアへと脱出を続けます。

 

その脱出行の中でも敵として立ちはだかるのは敵兵というよりは、孤独、飢え、渇き、寒さ、そして敵に見つかるかもしれないという恐怖です。

脱出行の終盤では、仲間や家族の幻覚を見たり、注意力散漫になって敵拠点の中に足を踏み入れてしまったりと、非常に混乱してきます。

 

ここら辺は、読んでいてかなり先が気になりましたね。

「こんな状態で国境を越えられるのか?」と疑問に思いながら読み進めました。

もういつ死んでもおかしくないような状態での脱出行です。

こんな状態でも、無事に国境を越えた著者の心身の逞しさがうかがえます。

 

そして、シリアに逃げてからもいくつか問題が発生するのですが、最終的に基地に帰還します。

また、この任務で著者が移動した距離を計算すると、なんと290km。

これは1日あたり40kmほど移動した計算になります。

しかもこの距離を食料・水がほぼ尽きている状態で徒歩で踏破してます。

もはや人間とは思えない・・・

 

ちなみに、これ以前の敵地脱出の記録は、1942年にジャック・シリートがサハラ砂漠で移動した160kmだそうです。

160kmも相当な記録ですが、それを上回る290kmはもはや理解不能なレベルです。

事実は小説よりも奇なり、ってこういうことを言うんでしょうね。

人間の可能性を垣間見たような気がします。

 

こんな感じでいろいろと物凄い脱出行なんですが、こんなことを成し遂げた人間が地球上に存在すると考えると、ちょっと恐ろしいです。

というか、普段は家でダラダラしてる僕からしたら、そもそもそんなことを実行できる人間がいること自体信じがたい。

まとめ

以上が『ブラヴォー・ツー・ゼロ 孤独の脱出行』感想ですね。

激しい戦闘ではなく、希望の見えない脱出行がなかなか印象的でした。

クリス ライアン (著), Chris Ryan (原著), 関根 一彦 (翻訳)

 

余談ですが、著者と同じチームに所属してたアンディ・マクナブって人の『ブラヴォー・ツー・ゼロ―SAS兵士が語る壮絶な湾岸争戦記』も読んでみたいですね。

こっちは途中で敵に捕らえられたグループの人の体験談です。

こちらもなかなか壮絶そう・・・

アンディ マクナブ (著), Andy McNab (原著), 伏見 威蕃 (翻訳)