【感想】『勝手に生きろ!』:ダメ人間のストレートな生き様が面白い

この前読んだ『勝手に生きろ!』って本が面白かったので感想書いてきます。

まさにタイトルの通り、勝手に気ままに生きる主人公の生活が描かれてました。

働いたと思ったらすぐにサボってクビになり、給料小切手をもらって酒を飲んで酔っ払う。

仕事を説明した管理者がいなくなったと思ったら、次の瞬間もうサボる。

ここでタバコ吸うなって言われてるのに管理者が消えた瞬間に吸い出したり、まだ終業時間じゃないのに競馬しにさっさと職場を後にしたりと、マジでやり放題。

で、最後は酒を飲んで家に帰って寝る。

基本的にはこんな感じのことの繰り返しで、ダメ人間の生活が描かれてるだけでひねったような内容は一切ないんだけど、だからこそ面白かったです。

多くの人は思ってても実行しないことをやったり、口にしたりします。

そんなダメ人間の主人公チナスキーの生き方が面白い本でした。

 

良かったシーンはいくつかありますが、例えば、この言葉とかめっちゃ好き。

ただ仕事をするだけではなく、その仕事に興味を持ち、しかも情熱をもってこなさなきゃならないと知ったのは、そのときが初めてだった。

参考:『勝手に生きろ!』

職場の同僚に態度のことを咎められた後、主人公はこう思うんですが、こういった考え方ってそのまま今の日本でも同じような感じだと思いました。

就職して、僕も同じようなことを感じました。

就活してるときから「好きなことで生きていく」とか「仕事で自己実現」とか「やりがいのある仕事」とか嫌っちゅうほど言われるわけですが、まあ働き出してからもそんな感じです。

多くの人は「やりがい」だとかか「自己実現」なんてものよりもお金のため、生活のために仕方なく働いてる思うんですが、そういったことをあからさまに態度に出したり口にしたりするのは憚られるような社会。

しかもそれを表に出さないどころか、あたかもまったく逆のことを思ってるかのように振る舞う社会。

そんな欺瞞に満ちた世界について、非常にストレートに言ってくれてる。

 

他にも、こんなシーンもあった。

仕事サボりまくった後、職場の管理者にクビを言い渡されるシーン。

「クビだってこと、わかってるな?」

「上司の考えてことくらいお見通しですよ」

「チナスキー、おまえは一か月間、すべきことをしなかった。自分でもわかってるはずだ」

「おれは頑張ったのに、あんたが認めてくれないだけですよ」

「頑張ってないだろうが、チナスキー」

おれはうつむいて、しばらく靴を見ていた。なんて言っていいのかわからなかった。そして彼を見た。「おれはあんたに、自分の時間をやった。おれがあんたにやれる、ただ一つのもの・・・誰もが持ってるものを。時給たった一ドル二五セントで」

「おい、働かせてくださいって頼んだのはおまえじゃないか。ここは第二の故郷ですって言っただろう」

「・・・おれの時間のおかげで、あんたは丘の上の豪邸に住み。豪勢に暮らせるんだ。この取引でなにかを失ったやつがいるとしたら・・・それはおれだ。そうだろ?」

参考:『勝手に生きろ!』

仕事サボっといてこの言い分・・・

チナスキー、なんてヤツだ。

何もかもがメチャクチャな感じがしますが、ここまでキッパリ言ってのけるともはや言ってることが正しい気がしてくる。

でもこれを読んでると、日ごろの鬱憤がなんかちょっと晴れる気がする。

自分が思っててもできないことをチナスキーが代わりにやってくれてる感じ。

ちなみに、このあとの捨て台詞もなかなか味わいがあって良い。

「マンツ、失業保険を出してくれ。ごまかしっこなしだぜ。おまえらみたいなやつは、なにかっていうとすぐ労働者の権利を踏みにじろうとする。だからごまかすなよ。でないともう一度戻ってくるからな」

参考:『勝手に生きろ!』

この発言だけを切り取ると完全にマンツ(職場の管理者)が悪い気がしますが、チナスキーも相当悪いことやってる。

というか、今回の場合は完全にチナスキーに問題がある気がする。

仕事サボって競馬で儲けてたりするし。

まあそれは置いといて、これは今の日本のブラック企業の上司・経営者の連中に叩きつけたい言葉なのは間違いない。

日本の労働者がこれくらいハッキリ言える人間ばかりだったら「ブラック企業」なんて言葉がはやることもなかっただろうに・・・

 

そうそう、この言葉もなかなか良かった。

確かに、おれには大いなる野心なんてものはないが、そんな人間にだって居場所があっていいはずだ。いつも通りの貧乏クジじゃなくて。大体、どうやって楽しめってんだ?目覚ましで六時半に起きてベッドから飛び出し、服を着て、無理やり朝めしを詰め込んで、糞して小便して歯を磨いて頭をとかし、職場に飛んでく。そこでは要するに、他の誰かのために金を儲けるばっかりで、それでも働かせてもらって感謝しろ、なんて言われるんだぜ。

参考:『勝手に生きろ!』

なんか言いたいこと全部言ってくれた感じがする。

これを読んだからといって何かが解決するわけじゃないけど、読んでよかったと言える文なのは間違いない。

自分が普段思ってることを他の誰かが思いっきりぶちまけてくれることが、ここまで心に効くとは思わなかった。

 

こんな感じで、社会のいろいろな理不尽なことに正面からクソを投げつけてくような主人公の姿勢が非常に印象的でした。

自分にはこういった生き方は絶対にできないけど、だからこそ惹かれる何かがある。

社会に対するもやもやを溜め込みすぎすぎちゃったときなんかには、もう一度読みたい。

名著ってこういうのを言うんだろうな。

チャールズ ブコウスキー (著), Charles Bukowski (原著), 都甲 幸治 (翻訳)